WORLD GIN MAKERS〜世界の造り手さんに想いを聞く〜第7回『NUMBER EIGHT GIN』NUMBER EIGHT DISTILLERY

WORLD GIN MAKERS〜世界の造り手さんに想いを聞く〜第7回『NUMBER EIGHT GIN』NUMBER EIGHT DISTILLERY

こんにちは、Ginny Club池田です。

今回は、横浜ハンマーヘッドにある「NUMBER EIGHT DISTILLERY」を取材させていただきました。

 

首都圏を中心に数多くのレストランを展開されているHUGEグループが手掛ける同蒸留所は、横浜ハンマーヘッドにあるレストラン「QUAYS pacific grill」の2階に位置し、レストランの中にある都市型蒸留所としては日本初だそうです。

 

造っているのは、細長いボトルに描かれた「8」の文字が印象的な「NUMBER EIGHT GIN」。

レストラン運営をされているからこその工夫や苦労など、興味深いお話をたくさん伺わせていただきました。

 

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日本初、横浜の埠頭に現れたレストラン併設の都市型蒸溜所

 

今回お話を伺ったのは、バーテンダー・蒸留責任者・トニックウォーター「フィーバーツリー」のアンバサダーという三足の草鞋で活躍される深水稔大(ふかみとしひろ)さん。

 

 

ー私自身、横浜出身で系列レストランも大好きなので今日は取材させていただけてとても嬉しいです。
そのレストランでも出されている「NUMBER EIGHT GIN」ですが、名前にもある「8」はボタニカルが8種類だからですか?

 

よく言われるんですが、8種類だからではなく、「8号岩壁(埠頭の係留施設の呼称)」からきてるんです。横浜ハンマーヘッドは客船ターミナルを中核とした埠頭にある商業施設で、9号岩壁と8号岩壁に挟まれています。

 

この蒸留所が入っているレストラン「NUMBER EIGHT GIN(キーズパシフィックグリル」が8号岩壁にあることから「No.8」という名前がつけられたんです。

 

ー岸壁名だったんですか!ボタニカルが8種類だからだと思っていました。

 

むしろジンの名前が「8」だからボタニカルを8種類にしたんです(笑)

横浜だと初(神奈川県だと2番目)の蒸溜所です。

 

ー横浜初なんですね!
その8種類のボタニカルも、特徴的ですよね。

 
レストラン内に併設される蒸留器。

レストラン併設蒸溜所だからこその工夫、素材を活かしたSDGsなクラフトジン。

 

使っているボタニカルはジュニパーベリー、イエルバブエナ(キューバンミント)、レモンバーベナ、神奈川みかん、無農薬レモン、生ホップ、コーヒー豆、アボカドの種の8種類です。

 

原酒が焼酎ベースなので、その焼酎感を消すために香りのある柑橘系を使って、ミントやハーブ系で爽やかにしました。

また、味を引き締めるためにホップやコーヒー豆を。階下(レストラン1階)でコーヒーを焙煎したりビールを作ってたりもするので、その素材を使うという意味でも、ストーリーがあるかなって。

 

原酒は粕取り焼酎を使ってるけど、焼酎感はだいぶ消しました。「焼酎にジュニパー加えてるだけ」になりたくなかったので、ボタニカルの処理の仕方や沸かす火加減などで調整してます。

 

ー確かに、焼酎ベースのクラフトジンは、結構焼酎の香りが残っているものも多いですが、これは焼酎感が強すぎず、すごく飲みやすいですね!

 

そしてボタニカルで特に特徴的なのがアボカドの種。

メキシカンのレストランがあるのでアボカドの種がいっぱい出るんですよ。どうしても廃棄されちゃうものなので、それを使ってます。SDGsでしょ(笑)

種子系のボタニカルなので味を締めてくれるし、「アボガドの種を使ってる」というキャッチーさもある。

横浜とか国産というところにこだわるというよりは、何か特徴的なボタニカルがあった方がキャッチーでわかりやすいと思って使ってみたんです。

 

ー「横浜っぽいジン」って難しいですもんね。めっちゃSDGsです(笑)
ちなみに、商品の種類としてはこのNumber Eight Gin以外にもあるのでしょうか?

 

通常商品として出してるのは「スタンダード」と「ダブルボタニカル」の2種類です。ダブルボタニカルは、名前の通り使用するボタニカルを全て2倍使っています。なので、よりボタニカルの味わいを楽しめるし、ジンっぽさを味わいたい人には人気です。

そのほかは不定期で限定商品がいくつか出たりしますね。

 

 

 

食中酒として、ビギナージニーにも楽しんでもらえるよう追求された飲みやすさ

 

ーたしかに、ジン好き酒好きの私はダブルボタニカルめちゃくちゃ好きだなって思いました(笑)
でも以前レストランにお邪魔した時に、スタンダードのNUMBER EIGHT GINを友達に勧めたら、すごく美味しい!って気に入って飲んでくれたんです。

 

あーまさにそれが嬉しいんですよね。

飲んだことある人が、「これ飲んでみて」って勧めた時に、「あ、これ美味しい」「これだったら飲める」と思ってもらえたら嬉しいんです。

 

特に日本は食前酒を飲んでから食事に行くという文化もないので、マティーニのようなショートカクテルよりも、ジントニックやジンソーダなどロングカクテルで食中酒として飲んでほしい。

 

だから限定品をちょこちょこ出すよりも、スタンダードを安定供給しながら、たまに限定品を作っていくスタイルにしていきたいんです。

どんな人にでも飲んでもらえる、万人受けするジンにしたいと思っています。

 



蒸留師の深水稔大さん。代官山の店舗でバーテンダーをしながら、横浜でジンの蒸留をされています。

 

蒸溜所見学をきっかけに興味を持ったジン造り

 

ーちなみにジンの蒸留を始められたきっかけは?

 

最初にジンを作りたいと思ったのはボンベイサファイアの蒸留所見学に行ったことがきっかけでした。そこで、自分もジン作れたらいいなと思って。

地元が熊本県なんですが、同級生に焼酎を作ってる人がいて、ジン作れない?という話をしたのが2015年ぐらいです。

 

ー2015年!日本のクラフトジンブームが始まる前ですね。

 

そう、まだ季の美とかも出る前でしたね。

その頃から焼酎にボタニカル漬け込んでやれないか?会社関係なしにジン作れないかなと思ってたんです。

 

当時はバーテンダーとして代官山の店舗にいたので、すぐに作り始めたわけではなく、その後会社としてジンをつくる機会ができてそこからジン造りに関わるようになりました。

 

ーでは、もともとお酒造りのご経験があったわけではないんですか?

 

全然。蒸留家になりたくてなったというよりも、バーテンダーの延長で、蒸留所に行ったりしていいなと思い始めた感じです。

大学時代にバーでアルバイトしてて、HUGEにバーテンダーとして入って、新店舗の立ち上げをやったり、今は全店のカクテルメニューを見るようになり、気づけば三足の草鞋ですね(笑)

 

ー三足の草鞋はすごいですね。蒸留する中で、一番大変なことはなんですか?

 

一人でやってること(笑)

あとは重たい段ボール運んだりとか(笑)

 

ーあ、そこなんですね(笑)

 

最近はスタッフに手伝ってもらったりとかもあるけど、基本的に蒸留担当は自分だけ。あとはレストラン内にある蒸溜所だからこそ、狭い(笑)

 

だから蒸留機も100リットル用の小さいものが1つと、あとはタンクが4つだけです。

ドイツ製の蒸留機を使ってますが、これはジャケ買い(笑) あとはこの狭さなので、このスペースに入る蒸留機も限られてて。

 

蒸留して加水して、1回の蒸留で120〜130本分できる計算です。

他の大きいところでは1000リットルぐらいの蒸留機を使ってる蒸溜所もあるので、それを考えると小ささがわかると思います。

 

蒸留後のブレンドはせず、全部ボタニカルをつけ込んで一発で蒸留します。毎回使うものやレシピは全部決まってるので。

その日のボタニカルの状態とかで少し味が変わることはあるけど、それが小さい蒸留所の面白いところでもあると思ってます。

 

もちろん大きなブレは出ないようにしています。最初に作ったものをためておいて、それを次の蒸留の時に足していく。うなぎのタレ方式ですね。

 

ーたしかに季節によってボタニカルの状態も違ってきますし、その絶妙な違いを活かしながら経年で味を作り上げていくのは面白いですね。



タンク写真

 

ハイブリットな提案で、ジンを飲む文化を広げたい

 

ーでは最期に、これからの展望を教えてください。

 

今後としては、バーテンダー、蒸留家、フィーバーツリーアンバサダーとしていろんなシーンでジンが飲めるようになってほしいと思ってます。

ジントニックを、お酒がダメな人はトニックを、色んなシーンで飲んでほしい。

三足の草鞋で活動するからこそ、お酒だけに関わらずハイブリットな提案ができるから。

 

あとは、ジンが横浜の名物になるといいですね。

自分のやっていることが、ジンを飲む文化を作っていくのに役に立ったら嬉しいです。

 

ー新たな横浜名物としてのジン、大賛成です!
本日は素敵なお話をありがとうございました!

 

 

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