こんにちは、Ginny Club広報担当です。
今月2回目となるWorld Gin MAKERS〜世界の造り手さんに想いを聞く〜は、
ろくもじジンさまです。
ろくもじジンは、新潟県南魚沼市で地場産の木を使って造られています。
まるで、森の中に入ったような空気「体内森林浴」を味わいや香りのベースにしており、
里山の新しい産業として、造る人も飲む人も自然もハッピーになるような
クラフトジン造りをされています。
ろくもじジンをプロデュースされている、
ろくもじ株式会社の代表取締役 今成様にお話を伺ってきました。
▲ろくもじ株式会社 代表取締役 今成さま
◉木の魅力を伝えたい!ろくもじジンの意外な始まり。
―本日はどうぞよろしくお願い致します。
今成さまのプロフィールと、ジン造りに至った経緯を教えてください。
初めまして、ろくもじ株式会社代表取締役の今成しかごです。
現在はろくもじ株式会社でジンと、別会社で木のものづくりをしています。
元々、里山の地場産の木を使った木のモノづくりをしているのですが、
その中で色々と里山の課題がわかって。
中でもミズナラがナラ枯れしていて、これが大きな問題になっています。
それを解決したいな、と思った時に最終的にクラフトジン造りが浮かびました。
―最初はジンではなく別のものを作っていたのですか?
最初に作ったのは「ミズナラスティック」です。
オーク材としても使われていて
日本でしか作れないミズナラを加工して、お酒に漬けることで、
ミズナラの樽熟した風味がするお酒を楽しめるという商品です。
発売当初、色々なメディアに取り上げていただけて、
これがなんと、1日で3万本も売れました。
そこに、需要があるんだなと気付きました。
「ミズナラスティック」が流行るということは、
お酒にも需要があるんだなということがわかりました。
お酒ありきでの商品なので。
ミズナラは、サントリーの山崎で使われていることもあって
海外でもすごく人気です。
今でも売っていますが、海外でのマーケットが大きいです。
―海外にも輸出されているんですね。
ミズナラの原木ではなく、スティックである理由はなんだったのでしょうか?
木の輸出をするときは、原木だと菌などの関係でかなり関税がかかります。
ミズナラスティックのように加工することで、
気軽に海外にいながら、日本のミズナラの樽熟した風味を楽しむことができるんです。
▲ミズナラスティック
―なるほど、そういう理由で海外人気が特に高かったんですね。
そこから、どのようにジン造りに至ったのでしょうか?
ミズナラスティックが売れた時に、お酒の市場が大きいなということと、
日本の木自体にかなり価値があるな、ということに気付きました。
これを一緒にしてしまえば、もっと木の魅力が伝わるんじゃないかと思って。
そんな時に、たまたまバーでジンを飲んで、
美味しかったので、何を使ってできているお酒なのかを聞きました。
そうしたら、その土地特有の植物だったり、色々なボタニカルを使っていることがわかって。
これは使えるな、ってなりました。
これがジン造りのきっかけです。
―運命的な出会いですね。
まさに今成さまが解決したい課題と、そのソリューションとしてのジン。
すごくマッチしているように思えます。
◉ろくもじジンに込められた森林への愛
ー実際に造られたジンはどのようなものだったのでしょうか?
当時、SDGsがかなり話題だったので
地元にあるりんごの加工工場で余っていたりんごの芯を入れたり、
新潟っぽさを出すために村上茶を入れたり、
人の役にも立ちたいということで、里山の障がいを持つ方や高齢者の方が採っているくろもじを入れたり。
人のためにもなるし、森林保全にもなるし、SDGsにも貢献できる。
そんなジンを造りました。これが第一弾です。
その後造った第二弾では、くろもじだけを入れました。
人の活躍にフォーカスを当てて、作ったジンです。
これもご好評いただいて完売になり、今は第三弾を作っています!
結局、僕はジンが好きというよりも
森林、木が大好きなので、それにまつわる課題を解決したいという想いが
強いですね。
▲第二弾のラベルデザイン
―本当に色々な課題解決に繋がるジンだったのですね。
今成さまの森林に対する愛が、とても伝わってきます!
元々、木がお好きだったんでしょうか?
6年前に新潟県の南魚沼に帰ってきた時に、自分で仕事したいなと思って。
その時、山しかなかったんです(笑)
木を使って何かをしようとなった時に、お金もなかったので
実家の家業(印鑑業)で使っている彫刻機で
木を四角く切ってオリジナルの彫刻をして、表札を作ってみました。
木の表札屋さんです。
その時に商品のラインナップを増やすため、里山など色々な山を回って歩いていました。
そこで、木の面白さに気付いたのと同時に
色々な課題があることもわかりました。そこからですかね。
―なるほど。
木の表札を作っていたら、木の魅力や課題に気付かれたのですね。
そこからジン造りに繋がっているのが、とても面白いと思いました。
◉田舎ならではのジン造りの苦労とは?
―ジン造りのきっかけはとても意外でした。
今は、新潟麦酒さんで蒸留されているとのことですが
ジンの味はどのように決めていらっしゃるんですか?
うちではそれぞれのボタニカルを浸漬法で蒸溜し、それらをブレンドして
ジンを造っています。
味は、僕が蒸溜師さんにイメージを伝えて造ってもらっています。
蒸溜師の方がいつも美味しいジンを造ってくださるので。
例えば、第三弾のキーボタニカルは山葡萄と樹齢300年のミズナラなんですが、
「ラムレーズンぽい感じで、ロックで美味しいものにしたい」という風に伝えてサンプルを造ってもらいます。
―なるほど!イメージを伝えて、それができてしまうってすごいです。
ジンを造る上で、一番苦労していることはなんですか?
木を直接取りに行かなきゃいけないことですね。
木を作っている里山の方々には直接会いに行っています。
現地でのコミュニケーションは楽なんですけど、インターネットに疎いので
配送などが難しくて。
ジンを買ってくれたときも、現金書留でお支払いしてくれます。
35歳になって初めて現金書留を見ました(笑)
―木を直接取りに行かなきゃいけないのは、大変ですね。
意外な苦労でした。
いつかうちのスタッフに回ってもらって、里山と街を繋ぐ役割を
担えたらいいなと思っています。
今は、里山と街を繋ぐものがないんですよね。田舎の大変さです。
木や商品の運送が自動化できれば楽ですし、里山と街をつなぐという意味で、早く自動車が無人で運転できるようになればいいなと思っています。
―私自身も北海道の色々な地域を見てきた中で
街と里山を繋ぐ役割はすごく重要だと思うので、すごく素敵な構想だと感じました。
◉気になる第三弾のジンは⁉︎
―先ほどちらっと出てきた第三弾のジンについて、
よければ教えてください!個人的にとても気になります。
今回のキーボタニカルは、「山葡萄×樹齢300年のミズナラ」です。
樹齢300年のミズナラは、ものづくりの方で仕入れたものなんですけど、
端材が大きくて使い道がなかったので、5年くらい乾かしておいたんです。
そしたらすごくいい香りになったので、使えるなと思いました。
ミズナラは樹齢が経てば経つほどいい香りになります。
バニラとかキャラメルっぽい香りですね。
山葡萄は里山の方々に採ってもらって、干したものを入れています。
サトウキビのスピリッツを使っているので、少し甘みもあります。
これらが合わさって、ラムレーズンぽいものに仕上がりました。
スピリッツとして出すこともできるんですが、やっぱり今はジンが流行っているので、森林の魅力を伝えたり課題解決のために、話題性のあるジンでお届けしています。
冬に出す商品なので、ロックやストレートでも美味しいものに仕上げました。常温でも美味しく飲めますよ。
12月くらいには発売できると思います。
最初に飲んだ時、正直今日本で一番美味しいジンだと思いました。
―お話を聞いているだけでも飲んでみたくなりました。
ちなみに、毎回パッケージはご自身で描かれているとのことですが
どんなこだわりで描いているのでしょうか?
正直、こだわりはあまりないです(笑)
とにかく目立つものにはしたいと思っています。
僕、ジョジョの奇妙な冒険が大好きなんですけど。
第二弾のボトルデザインはジョジョっぽい構図にしました。
人の活躍にフォーカスを当てた商品だったので、
僕が普段見ている、この地域らしい雲海や動物を人に重ねました。
かっこいいなと思ったものを描いています。
―めちゃめちゃかっこいいです。
第三弾のデザインはどういうコンセプトなのでしょうか?
僕、エヴァンゲリオンも好きで。エヴァの使徒っぽいものを描こうと思って描きました。浮かんだものを常に書いているだけです。
―芸術家ですね。
▲第三弾のラベルデザイン
◉とにかく知ってもらうこと、それが一番のこだわり
―ろくもじジンを造るうえで、一番のこだわりはなんですか?
とにかくジンを知ってもらうためにどうしたらいいか、を考えていることです。
例えば、この前参加した EXPOで、うちのジンを無料配布したんですよね。本当は、香りがいいのでジンソーダで飲んで欲しかったんですが、
今こだわりたいのはそこではなくて。
とにかく知ってもらうために、馴染みのあるジントニックで配りました。
ジン自体はすごくこだわっていますし、そこはパンフレットで伝わる人に
伝わればいいかなと思っています。
飲んだ方は皆さん美味しいって言ってくれますよね。
気になった方々がそこでジンを買ってくれて、うちのストーリーに共感してくれたらいいなと思っています。
とにかく、お客さんにまず知ってもらうためのマーケティングをすることが今の仕事だと思っています。
―とにかく、マーケティングにこだわっているんですね。
ジンを日本の食卓に広めたいというGinny Clubの使命も近しいので、とても勉強になりました。
▲EXPOでの出展の様子
◉目指すのは、木の魅力を伝えるジン
―ろくもじジンの未来について教えてください!
今は蒸溜所を持っていないので、生まれ育った故郷の南魚沼市で蒸留所を造りたいです。
木のものづくりの方では、樽を作れる技術をつけて
ミズナラを使った樽づくりから酒造りまでやっていきたいと思っています。
とても魅力のある日本の木を伝えるためのツールとして、
成長させていきたいと思っています。
将来的には木が美味しい、って言ってもらえるようにしたいです。
めっちゃ面白いと思うんですよね。
森林保全に関してはそれが目的ではなく、
最終的にそれができているっていうことも大事です。
―なるほど。
確かに、木が美味しいという認知がされたらそれはすごく素敵だなと思いますし、すごく面白いと思いました。
また日本の魅力的な森林を世界に広めていくという意味でも、
ろくもじジンの今後がとても楽しみです。
本日は、貴重なお話をありがとうございました!
ー編集後記ー
今回お話を伺ったろくもじジンさまは、私自身とても関心のある
地域との共生や地域課題の解決につながるWin-Win-Winなもので
とても勉強になりました。
また、ご自身で描かれているボトルデザインも意外な背景があり
とても面白かったです。
お店やバーなどでろくもじジン第三弾を見つけた方は、
ぜひお試しください!私も早く飲んでみたいです!