こんにちは、Ginny Club広報担当です。
今月のWorld Gin MAKERS〜世界の造り手さんに想いを聞く〜は、
養命酒製造株式会社さまです。
400年以上にわたり薬酒を造ってきた養命酒製造株式会社さまがつくる、独自のジンとは。
ひと口飲めば、まるで森林浴をしている気分になれる「香の森」「香の雫」を造る最強のバディ、商品開発センターの入江さまと駒ヶ根工場の中沢さまにお話を伺いました。
▲商品開発センターの入江さま(左):養命酒製造株式会社で商品開発をご担当。ジン造りでは、ボタニカルの選定や香味設計などを担う。
▲駒ヶ根工場の中沢さま(右):養命酒駒ヶ根工場で、ジン造りの技術面をご担当。ジンで使用する蒸溜器などの設備管理などを担う。
400年以上にわたり受け継がれてきた技術でジンを
(藤枝)
ー入江さま、中沢さま、本日はどうぞよろしくお願い致します。
まず最初に、貴社がジン造りを始めた経緯をお聞かせください。
(入江さま)
養命酒の創製は1602年(慶長7年)、400年以上薬酒を造っていますがジンも歴史的には薬酒ですよね。そこで親和性を感じたのがきっかけです。
歴史的に薬酒を造っている弊社がジンを造ったら面白いだろうな、と思っていました。
薬酒で使う生薬への知見や弊社の製造技術も活かせるのではないか、ということでジン造りが2017年に始まりました。
(藤枝)
―なるほど、貴社の元々の事業とジン造りはとても親和性が高かったんですね。ジンをリリースした時の消費者の方々の反応はどうでしたか?
(入江さま)
正直、薬酒を造っている会社がジンを造ることにお客様が疑問を感じるのではないかと心配していました。
しかし、実際の反応は意外で。
薬酒を造っている会社だからこそジン造りは得意そう、とすんなり腑に落ちた方が多かったみたいです。
(藤枝)
―確かに、歴史的に見ればジンも薬酒だったことを考えると、
すんなり腑に落ちるのも理解できます!
お二人は元々、ジンやジン造りにお詳しかったんでしょうか?
(入江さま)
私はなんとなく、ジュニパーベリーが入っているお酒ということを知っていた程度です。
何度かジントニックは飲んだことがありましたが。
(中沢さま)
私も、元々ジンが好きだった訳でも詳しかった訳でもありませんでした。
弊社としてもジン造りは初めてでしたし、現在蒸溜作業を担当している3名も
ゼロベースでジン造りを始めています。
(藤枝)
―お二人ともジンに関しては、ゼロベースでのスタートだったんですね。
クロモジへの熱い思いから生まれた試行錯誤のオリジナルジン
(藤枝)
―ゼロからのスタートということで色々とご苦労されたと思いますが、
一番大変だったことを教えてください。
(入江さま)
私が一番苦労したのは、キーボタニカルのクロモジの香りを活かすことです。
養命酒では、クロモジが一番多く配合されています。私自身、クロモジの香りにとても魅力を感じていて、いつかクロモジの香りを主役にしたお酒が作りたいと思っていました。
当社ではこれまで、ハーブをお酒に浸漬して造るリキュールを製造してきましたが、多くの開発・試作の経験から、リキュールでクロモジを主役にしようとすると、かなり多くのクロモジを使用しないと香りが出ない上に不要なえぐみや苦味が同時に出てしまうことが分かっていました。
蒸溜して造るお酒なら、クロモジの良さを十二分に活かせるのにと、長年胸に秘めていました。
そこで、今回のジン造りの話が挙がってきたんです。
私は真っ先にクロモジで勝負したいと申し出ました。
ただこれが本当に難しくて。
ただ蒸留するだけだと、クロモジの香りが全然出なかったんです。
そこで、従来使用していたクロモジの太い枝だけではなく、細枝や葉っぱなどもいろいろな条件で蒸溜してみました。試行錯誤してやっと今のジンが出来上がりましたが、本当に大変でした。
▲クロモジが主役の「香の森」
(藤枝)
―入江さまのクロモジに対する愛が凄いですね!
開発の段階で、クロモジをいかに活かすのかに
とても苦労されたことがわかりました。
(池田)
―クロモジの部位によって、香りの抽出具合が変わるんですね。
ちなみに、クロモジの収穫時期などによっても香りに変化があるんでしょうか?
(入江さま)
クロモジの葉は収穫時期によっても香りが変わります。
例えば、新芽の時期ですとやさしくて柔らかい香りがしますし、
葉っぱが成熟した時期ですと香味に厚みが出るようになります。
クロモジの葉は手摘みしています。この時期にこれだけの量が欲しいとリクエストして、いつも中沢には負担をかけてしまっています。
そこも理解して一緒にジンを造ってくれるバディです。
(中沢さま)
1年分の葉っぱを自分たちで取るのは、本当に大変です。
かなりの量を取っても、葉っぱは嵩張るので重量的には思ったほどにならないんですよね。
そんな収穫の様子も想像して弊社のジンを飲んでいただけたら嬉しいです。
(池田)
―手摘みなんですね!
本当にお二人が素晴らしいバディでかっこいいです。
(藤枝)
―蒸溜の過程よりも前に、大変苦労されているんですね。
ちなみに、実際にジンを蒸溜する過程で一番苦労されていることはなんですか?
(中沢さま)
ジンを造る上で一番大変なのは、常に同じ品質の商品を出さなければいけないということです。現在、蒸溜作業を担当するスタッフが3名いますが、誰が造っても同じ味にしなければいけないというのは、非常に難しいです。
そうした背景もあって、私たちは蒸溜器を自分たちの手で改造しています。
品質の安定を求めて、常に試行錯誤しています。
(藤枝)
―蒸溜器を改造しているんですか!それは凄いです。
ジンの製造過程だけではなく、蒸溜設備まで試行錯誤されてオリジナルのものを確立しているんですね。
ちなみに、蒸溜器はどういったものを使っているんですか?
(中沢さま)
蒸溜器は、ドイツのアーノルドホルスタイン社のものを使用しています。
蒸溜窯が600リットル入るので、一回の蒸溜でおおよそ400〜500本程度のジンを造ることができます。
弊社のジンはクロモジとそれ以外で分けて蒸溜、後からブレンドしているので
正確な数字はお出しできませんが、大体それくらいの規模です。
▲蒸溜器と作業の様子
(藤枝)
―クロモジだけ別で蒸溜されているんですね、ここでも強いこだわりを感じます。
森の中の蒸溜所〜森を感じる「香の森」が誕生する場所〜
(藤枝)
―これまでにもクロモジに対する強いこだわりなどを伺ってきましたが、
貴社のジン「香の森」「香の雫」を造る上で、特に大事にしている部分を教えて
ください。
(入江さま)
やはり森の香りを感じていただけるように、工夫をしていることです。
弊社のジンを飲んでいただく方には、目をつぶるとまるで森の中にいるような
気分でリラックスしていただきたいと思っています。
弊社の工場は中央アルプスの麓にある自然豊かな森の中にあるんですよ。
開発時は、工場の森を管理している樹木医(樹木の健康をサポートする)の方と一緒に森を歩きながらボタニカルを採取したり、森のイメージを膨らませながら、ジン造りに反映できるようにしました。
「香の森」では特に、クロモジの森らしい香りを表現するために18種類の
ボタニカルを組み合わせているので、深く静寂な森を感じていただきやすいかと思います。
▲中央アルプスの麓にある工場
(藤枝)
―実際に森を歩かれて、イメージをしたものをジン造りに落とし込む。
どこまでも香りへのこだわりを感じます。
(入江さま)
私はボタニカル(植物)の力を最大限引き出して香りと味の成分を極力
お酒に閉じ込めることが、素材に対しての敬意だと考えています。
飲みやすいジンを手に取ってもらいたい〜ビギナージニー向けの「香の雫」〜
(藤枝)
―養命酒製造さまでは、「香の森」だけでなく、「香の雫」も展開されています。
「香の雫」を造るにあたって、意識されていたことはございますか?
(入江さま)
複雑で深いクロモジの香りを感じやすい「香の森」に比べて、
シンプルにクロモジの香りを楽しみ、飲みやすく設計したのが「香の雫」です。
ジンに触れたことがないビギナーの方でも飲みやすいように造っています。
300mlとジンの中では小容量なので、気軽に手に取っていただけたら嬉しいです。
(藤枝)
―なるほど!ビギナージニーの方でも、飲みやすく気軽に試すことができるというのは素敵ですよね。
ちなみに、お二人がお勧めする飲み方はございますか?
(入江さま)
私はやっぱり、シンプルにソーダ割がお勧めです。
シンプルな飲み方ですが、ごくごく飲めてしまいます。
(中沢さま)
私もソーダ割が好きですが、冷凍庫で瓶ごと冷やしてストレートで飲むのも好きですね。
ちなみにソーダ割をするときに、最近気付いたことがありまして。
自宅で飲むとき特に計量せず作っていたら、自分でも気付かないうちにかなり濃いソーダ割になっていたんですよね。
それはあんまりおすすめではなくて。
最近はしっかりと計量して、ソーダ割を飲むようにしています。
ジンはちょっと薄いくらいで香りを楽しむのがいいんです。
(池田・藤枝)
―自宅で飲むと、ついつい濃くなってしまうのはわかります(笑)
▲シンプルで飲みやすい香の雫
自由なお酒、ジンを日本でも広めたい
(藤枝)
―最後に、ジン造りを通じて実現したい世界を教えてください!
(入江さま)
「イギリスのジン文化」を日本でも実現することです。
一度訪英した際に、スーパーマーケットのジンの種類の多さに、イギリスのジン文化を感じました。ある調査では、イギリスの一般家庭には
5〜6銘柄のジンが置いてあることが明らかになったそうです。
ジンを日本中に広めたいと思っているので、まさにジンとお客様との距離感が近く、気軽にジンを楽しんでいるイギリスのジン文化を、日本でも実現させたいと思いました。
現状日本では、まだまだジンが気軽なものとして普及していません。
会社単体では実現できないことですから、色々なところと連携して実現できたらいいなと思っています。
(藤枝)
―ジンを日本の食卓に広めたい。Ginny Clubとして、とても共感できます。
私自身もイギリスに留学経験がございますが、確かにジンが人々の生活に
根付いているように感じました。
私たちも、入江さまのビジョン実現に向けお力になれたら嬉しいです。
(中沢さま)
私は、自分たちの会社らしいジンを造り続けていきたいです。
ジンほど自由なお酒ってないと思うんです。
私自身も以前はジンについてほとんど知りませんでしたが、とても面白いお酒であることがわかりました。
オリジナリティを大切に、ジン造りをしていきたいです。
(藤枝)
―養命酒製造株式会社さまのゼロスタートからのジン造りのお話で、
蒸溜器から製造方法に至るまで、オリジナリティを大切にされていることが
伝わっていました。
引き続き、オリジナリティあふれる養命酒製造さまのジンが楽しみです!
本日は、誠にありがとうございました。
―編集後記―
今回お話を伺った養命酒製造株式会社さまは、創製以来400年以上にわたる薬酒と共に歩んできた歴史ある造り手さんです。
既存の方法にとらわれず、一からジン造りに励まれていること、
素材に対する強いこだわりと愛、試行錯誤の連続の苦労などをお聞きできました。
また、ビギナージニーに向けても手に取りやすく飲みやすいジンを造っていたり、ジンの普及を目指す姿など、非常に共感できる部分が多かったです。
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