みなさんこんにちは
GinnyClub 広報のほのぽんです。
今月の World Gin MAKERS〜世界の造り手さんに想いを聞く〜では弊社の池田が、いま話題のTL PEARCE(ティーエルピアス)蒸溜所に直接伺ってきたので、
その様子をお届けいたします!
TL PEARCE 蒸溜所は 2022 年7月にジン造りを始めてから、約半年間でジン業界でも話題に挙がることの多い蒸溜所です。
伝統的なレシピを受け継いだクラシックなジンに込められた秘密とは?
▲マイケル・ピアスさん
TL PEARCE蒸溜所のCEO。
ベルギーのSAS蒸溜所にて修行を積み、SAS蒸溜所留学プログラム修了。
▲ボブ・ストックウェルさん
TL PEARCE蒸溜所オペレーションディレクター。
Tokyo Aleworksジェネラルマネージャー・Tokyo Whisky&Spirits Competition公式審査員を務める。また、IBD General Certificate in Distillingでもある。
スコットランドで4ヶ所のモルトウイスキー蒸溜所で修行を積んだ。
掛け声は Be Classic!! トラディショナルなジンで乾杯
「Be Classic!!」
―本日はどうぞよろしくお願いします。
ボブさん:よろしくお願いします。まずは、乾杯ということで。
「Be classic!!」 私たちのジンは伝統的なレシピで造っているクラシカルなジンなので、ぜひこの掛け声とともに飲んでいただきたいです。
―では早速ですが、お二人がジンを一緒に造り始めたきっかけを教えてください。
マイケルさん:私たちはクラフトビールの審査会で出会いました。
私は元々ベルギーでお酒造りの修行をしていて、クラフトビールの審査員をしていたんで す。
元々、ジンが特別好きだったわけではないのですが、ボブに都内で美味しいジンを強く勧められて。それから好きになりました。
―いまいただいているジンもすごく美味しいです!
サーバーから注いでいるんですか?
ボブさん:そうなんです!私たちはトニックウォーターもこだわりを持って造っていて、ジンと合わせて出しています。
TL PEARCE のジンは1600 年代のクラシックなレシピで造っているので、
市販のトニックウォーターだと too much になってしまうんです。
―なるほど! 日本で通常サーバーからトニックウォーターを出すと、
コンク(サーバーで出すトニック) の味が勝ってしまってジンの風味がわかりづらくなってしまうことが多いんですよね。だからジンそのものが美味しいと認知してもらうことが難しいんです。
手軽にこんなに美味しいジントニックが飲めるなんて素敵すぎます。
とはいえ、毎度サーバーで飲むのは難しいので自宅で飲むときにおすすめのトニックウォーターも教えてもらえたらうれしいです。
ボブさん:それはやっぱり、FEVER TREEですね。
砂糖が控えめで、バランスがいいトニックウォーターだと思います。
ちなみに、ガーニッシュにはライムを入れたりレモン果汁を足すのがおすすめです。
―ガーニッシュのおすすめまでありがとうございます。
確かに、トニックで割るなら甘さ控えめのものと相性が良さそうですね。
王道のドライジンだからこそ、色々なアレンジが楽しめるんですね。
ちなみに、お二人が目指すジンについて教えていただきたいです。
ボブさん:私たちが目指すのは、クラシックなドライジンです。
ここ数年は日本でも空前のジンブームが来ていますよね。
国内の蒸溜所では、それぞれが工夫してさまざまなボタニカルを押し出したクラフトジンを造っています。 日本らしいジャパニーズジンも美味しいものがたくさんあります。
そんな中で私たちが目指すのは、日本のものを使ったクラシカルなジンです。 「ジャパニーズジン」を作るのではなく「日本でジンを作る」ことをしたいんです。
まだ計画段階ですが、日本産のジュニパーベリーを栽培することも考えています。
―それはすごいです。
以前、日本でジュニパーベリーの栽培はかなり難しいと聞いたことがあります。
ボブさん:かなり大変だとは思います。まだまだ計画段階です。
それに加えて、ジンが主役のジントニックを広めたいと考えています。
最近のジンは、トニックなどの割材で飲まれることが前提で造られることも多いです。 でも私たちが目指すのは、ストレートでも美味しく飲めるジン。
“ジン&トニック“であって、”トニック&ジン“ではない、というのがマイケルの口癖です。
―なるほど、あくまでもストレートで美味しく飲めるジンで、ジンが主役のジントニックを目指していらっしゃるんですね。
そんなお二人が造っているジンのラインナップを教えてください。
ボブさん:現在販売しているジンは 2 種類あります。
まず、「TOKYO DRY GIN」(トウキョウドライ ジン)です。
愛媛県産の国産のみかんやジュニパーベリーなど 9 種類のボタニカルを使用して造っている正統派のジンだといえます。
もうひとつは「Navy Strength」(ネイビースト レングス)です。アルコール度数が 57%と高めになっているのが特徴で、18 世紀のイギリス海軍が好んで飲んでいたことから名付けられたものです。
日本産のボタニカルを使いつつも、レシピは伝統的なものを受け継いでいます。また、キーボタニカルはありつつも、全体的にバランスの良いジンに仕上げているのが、私たちのジンの特徴です。
―なるほど。 今まさに飲ませていただいていますが、トップノートに爽やかな柑橘の香りがしてすごく飲みやすいです。でも、飲んでいるとしっかりとドライジンで。ボタニカルが主張しすぎず、 ソーダ割りでスッキリといただけますね。
▲TL PEARCEさまが造るTOKYO DRY GIN(左)と NAVY STRENGTH(右)
TL PEARCE の名前の謎は 3 年後に明かされる!?
―ずっと気になっていたんですが、ボトルのイラストは神様ですか?
ボブさん:鐘馗(しょうき)という中国の神様です。
疫病神から人間を守ってくれる神様なんですけど、英語だと”Protect from bad spirits.”(悪いスピリッツ=疫病神から守る)と言いますよね。それを文字って、悪いスピリッツ=悪いお酒から守ってくれるジンになるようにと使いました。
実は京都に鐘馗を祀っている神社があって、直接宮司さんにイラストとして使用することを伝えに行ったんですよね。勝手に使ったら怒られてしまうんじゃないかと不 安だったんですが、むしろすごく喜んでくれて。
―お墨付きなんですね!
ちなみに、TL PEARCE 様の TLという名前にも何か意味が込められているんでしょうか?
ボブさん:それは 3 年後に明かします。
TL PEARCE のロゴの意味を考えながら飲んでもらえたら嬉しいです。ぜひ酒のつまみとして、話題にしてみてください。
―ええ、それはすごく気になります! 3年後に謎が明かされるのを楽しみに、バーに行ったときにはみんなで推理してみますね。
最大規模の蒸溜器で造る苦労とは
―ここまで、TL PEARCE 様のストーリーを伺ってきましたが、実際にジンを造るときに苦 労していることなども教えてください。
マイケルさん:一番大変なのは、ラベル貼りです。 蒸溜作業は楽しいのでいつまでもやっていられるんですけど、ラベル貼りは手作業なので すごく大変なパートですね。
蒸溜過程で大変なのは、⻑時間蒸溜の様子を観察し続けなければいけないことです。 私たちが使っているのは、一度に 2,000 リットル蒸溜できるジンの蒸溜器としては日本最大規模のものです。その分蒸溜時間は通常 6 時間程度のところ、20 時間以上かかってしま います。
蒸溜作業では、常に集中して蒸溜器の音を聞き分け、温度を調整し続ける必要があります。それほど⻑い時間集中し続けるのは大変ですね。
もし蒸溜が失敗してしまうと、20 時間以上の労力も無駄になってしまいますし、2,000 リットルも廃棄しなければいけなくなってしまうので、かなり神経を使います。
ちなみに、蒸溜方法としては師匠の伝統的なレシピを受け継いでいて、一度に全てのボタニカルを蒸溜します。
―一度に2,000 リットルも蒸溜できるのはすごいです。 ちなみに、蒸溜の頻度はどれくらいなんでしょうか?
マイケルさん:蒸溜は 1 ヶ月に一度程度です。蒸溜の行程は大変ですが、すごく好きな作業なのでちょっ と物足りないですね。
▲日本最大級の蒸溜器
TL PEARCE が目指すのは庶⺠的な飲み物、ジン
―お二人は海外でもバーなどにいかれることも多いと思いますが、 お二人から見て日本と海外のお酒文化の違いはありますか?
ボブさん:そうですね、例えば日本ではよくあるオーセンティックバーですが、海外だとかなり珍しいと思います。極め付けは、ハイボールです。日本ではすっかり馴染み深いハイボールですが、 海外だと作るのを断られてしまうくらい馴染みがないんです。
歴史的に見れば、紳士の飲み物として外国で飲まれていたものを、1930 年代に日本で取り入れたんですけどね。
―なるほど。それだけお酒文化が違う日本ですが、お二人はどのようにジンを広めていきた いですか?
ボブさん:冒頭のジントニックサーバーを使って、日本におけるジンを庶⺠的な飲み物にしたいです。 日常的に飲めるドリンクとして定着させたいですね。
例えば、既存のビールサーバーを 1 台ジントニックサーバーに変えて、ビールの合間にジ ントニックを飲んでもらいます。 ジントニックサーバーが話題性を呼んで、ジンが広まる起爆剤になったら嬉しいです。
―GinnyClub もジンを日本の食卓に広めたいと考えているので、そんな世界が実現したら 嬉しいです。 どうしても若者が最初にジンに触れる時は、美味しいジンや美味しい飲み方を知れる機会 が少なく、苦手意識を持ってしまうことが多いです。気軽に美味しいジントニックに出会えるのは、すごく素敵です。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
―編集後記―
日本のものを使って伝統的なジンを造る。Be classic が合言葉の TL PEARCE 様は、日本の ジン文化を浸透させるべく様々な取り組みをされている蒸溜所でした。
気軽に美味しいジントニックが飲めるジントニックサーバーをはじめ、話題性のあるボト ルデザインの採用など、どれもビギナージニーのみなさんも楽しめるものです。
そんな TL PEARCE 様のジンが気になった方は是非一度、試してみてはいかがでしょうか?
ちなみに、TL PEARCE のお二人が今ハマっているのは、ホットジンカクテルだそう。 寒さの厳しい冬に一度試していただきたいレシピと一緒に、後日ご紹介させていただきます!